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わたしとおかあさん

投稿日:2007年10月1日 カテゴリ:エッセイ

母は大正7年、現在の米原市の生まれです。小学校の教員をしていましたが、気象台勤務の父と結婚して、伊吹山のふもとの農村に入りました。すごく頭のいい人で、家で先生が身近にいる感じ。僕は大きな影響を受けていると思います。
小学5,6年生のころでしょうか。夏休みの日記で毎日、詩を書くといいよと勧められました。書き始めてみると、「ここは体言で止めると響きが出る」とか「ひっくり返すともっと伝わる」とか、的確なアドバイスで乗せられ、分厚いノートができました。
逆に「宿題をするのは明日にしよう」なんて言うと、さらりと「明日ありと思う心のあだ桜 夜半に嵐の吹かぬものかは」(明日があると思っていても、桜の花と同様、分からないもの)なんて短歌を引用して諭される。家の外でもそうでしたが、子供との関係でも交渉術がうまい人でした。
中学や高校のころも、宿題をのぞきに来て、数学の教科書をちらっと見てすぐに解いてしまう。白状すると、大学の哲学のレポートを母親にやってもらって、最上位の評価を受けてしまったこともあります。とにかく勉強が好きな人だったんですね。若いころ父親を亡くして思うような進学ができず、勉強をやり残したという思いを持っていたようです。
職に就くとき、ジャーナリストにとも考えていたら、母に「あんたは教師が向いてるよ」と言われました。実際になってみて、なるほどな、と思いました。できない子、悪さをする子が、やる気が出てきて伸びるのを見るのが好きなところなど、自分は母に似ているなあと思います。
でも、今、サインで「ありのままに今を輝く」と書いているのは、母親への反発という意味合いもあるんです。僕には、しつけられ、親にとっていい子で育ったという思いがあります。高校くらいでそれが嫌になって、自分なりに脱却するのが、きつかった。
一つ、びっくりしたのは、家の中から戦時中の新聞のスクラップが出てきたこと。日本軍が勝った勝ったという記事ばかり。平和の大事さを教える反面教師の素材かと思いきや、「子供が生まれたら、日本はこんなに活躍したんだと教えようと思って」と。「えーっ。あんなに賢い母が」と驚きました。戦争に突入していく時はさりげないものなんだなと感じています。
母は今、香川の姉の家で健在です。もの忘れも増えてきましたが、会うと「ちゃんとハンカチは持ったかい」なんていわれたり。やっぱり今でも僕は子供なんですね。

(毎日新聞 2007年10月27付)

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尾木ママ

誕生日:
1947年1月3日
血液型:
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出身地:
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東京
職業:
教育評論家、法政大学特任教授
臨床教育研究所「虹」所長
出演番組:
NHK教育(Eテレ)「ウワサの保護者会」
(土曜21:30~21:54放送 ※MC)

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