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お父さんのスピード料理

投稿日:2008年8月1日 カテゴリ:エッセイ

昔はよく「秋ナスは嫁に食わすな」と言ったものだ。諸説あるものの、秋ナスはおいしいので、憎らしい嫁に食わすのはもったいない。姑の意地悪なのだという解釈にも納得させられる。

ナスといえば6月から10月が旬。日本人で「ナス嫌い」の人はあまり聞かない。

「ナス紺」の色も鮮やか!とくに、皮には衣をつけないで、上手にキツネ色に揚げられた天ぷらなど最高に美味。「ナス紺」を愛でながら、ゆっくりと口に運ぶ瞬間がたまらない。

「えっ、お父さん、またナス!?」

娘たちは、私が料理を作ると、決まってこんな悲鳴とも喜びともつかぬ叫び声を上げる。それくらいわが家では、「お父さんの手料理=ナス」のイメージが定着している。

実は、ナスはキュウリや冬瓜と同様に90%以上が水分でできている。だから幸か不幸か、栄養価は高くない。せいぜい皮に含まれているポリフェノールの一種であるナスニンなる栄養素くらいしかない。したがって、私の大好物の、丸ごと焼きナスにして皮をむいた「焼きびたし」は、カロリーは限りなくゼロに近い。生活習慣病や「メタボ」を気にする人にはぴったりの食材である。

ところで、このナス。スーパーで買うときから戦いは始まる。私は、いつも最初にヘタの状態をチェック。取った手のひらにツンとトゲが刺さるか、切り口は新鮮か、「ナス紺」は鮮やかか、実際に持ってみて軽くないかどうかを調べる。軽いのは、包丁で切った時、まるでスポンジのようにスカスカしている。やはり、重い方がいい。冷蔵庫に入れて時間がたつと、切り口に黒いゴマ状の点々が浮いてきたりしておいしくない。ナスは低温に弱いのだ。だから袋詰めより、バラ売りの物を1個ずつ確かめて、買い物カゴに入れる。1人1個の見当で、4人家族だからたいがい4個買う。1回で使い切るためだ。

ナス料理のレシピで、その日の私の忙しさと愛情度が計れる。最高の多忙さを象徴するレシピは、何と「焼きナス」である。なぜなら、一番てっとり早いからだ。逆に、ゆったりモードの日は「ナスの田舎煮」。これらの中間が「ナスとピーマンのみそ炒め」といったところか。単純なレシピでも、これらにどんな薬味を添えるかによって、愛情度はいかようにも調整可能である。バージョンアップもできる。そこが料理の楽しさだ。

今回は、超多忙時の「焼きナス」。だれでも簡単に作れる。以前は、最初に水にひたして灰汁抜きをしていた。しかし、これでは栄養素が全部流れかねない。いくら何でも、伸び盛りの娘たちの体によくない。だから今では、塩を軽くふってしばらくおく。まな板や包丁を取り出す前に、手際よくやるのがコツだ。

ナスは縦に四つ切り。油はオリーブかコーンを敷く。水気はしっかりふきとり、中火で焼く。油をよく吸収するので、思わず油を継ぎ足したくなる。しかし、ここが肝心。我慢のしどころ。しばらく待っていると、さっき吸った油が、今度は逆にナスからにじみ出てくるから不思議。皮も美しい「ナス紺」に光ってくる。

薬味には、おろしショウガ、ミョウガ、シソなどが合う。何とバラエティーに富んでいるではないか。少し時間にゆとりがある時は、鳥のミンチを炒めて田舎みそ、みりん、酒を少々加えて片栗粉でとじ、タレを作る。これが長女の大好物。配膳の際、彼女のナスの上にタップリかけてやると、「ワァーイ、やった!」と目を細めて喜ぶ。その顔を想像すると、足が棒のように疲れていても元気が出てくる。つい頑張ってしまえる。

愛情でいかようにもバージョンアップできる私のレシピ。何と便利なことよ。「ナスの田舎煮」や「油焼き」、「ショウガじょうゆあえ」もいい。真夏には、「みそからし漬け」や「浅漬け」。

さっぱりした食感に娘たちも生き生きとよみがえる。

(「Let’s!家事おやじ」『佼成』2008年8月号)

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160318-0737

尾木ママ

誕生日:
1947年1月3日
血液型:
A型
出身地:
滋賀県
現在の住まい:
東京
職業:
教育評論家、法政大学特任教授
臨床教育研究所「虹」所長
出演番組:
NHK教育(Eテレ)「ウワサの保護者会」
(土曜21:30~21:54放送 ※MC)

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