日本経済新聞(1月9日付・夕刊)に尾木直樹のコメント掲載
投稿日:2009年1月15日 カテゴリ:コメント
「カーナビ親」の落とし穴
「大学は○○大学クラスに何とか」「就職なら△△会社よ」―。子どもに先回りしてアレコレと進路を指示する親が目につく。車の道案内をするカーナビゲーションシステムに似ていることから「カーナビ親」と名付けてみた。将来を心配しての親心かもしれないが、一歩間違うと、子どもから失敗体験を奪い、自立を阻害する恐れもある。
【尾木直樹のコメント】
「いつまでたっても親が先回りする例は大学でも日常茶飯事です」。法政大学教授で教育評論家の尾木直樹さんは苦笑する。電車が遅れると、大学事務所に遅刻の電話をしてくるのは本人ではなく母親。「熱があるので休む」と欠席連絡も母親。電話の背後で「休むのは△△先生の授業」と念を押す学生の声が聞こえてくるといった具合だ。
指示を出したり、事細かに面倒を見たりするカーナビ親は日本だけの現象でないらしい。尾木教授が驚いたのはフィンランドを訪れた際に知った「カーリングペアレント」という言葉。ストーンを目標へ滑らせるため、表面をブラシで掃くカーリング競技の姿になぞらえ、子どもの先々に手を打つ過保護の親を皮肉った言葉だ。
「ただし日本の特徴は、過保護な親として単純にくくれない現象が広がっていることだ。判断力があり幅広い知識がある親ほど、子どもの将来を心配し面倒を見る流れが強まっている」と尾木教授は指摘する。
正規社員が減り、派遣やパートなど非正規雇用が増えるなか、親は子どもがこの社会で生きていけるか不安を抱いている。社会の実情を知る親ほど、何とか子どもをリスクが少ない方へと誘導したくなる。社会の安全網もあまり機能しない現実から「親が子どもを守らないで、だれが守るか」という意識が拡大していると尾木教授は分析する。