第15回:子どもが主役の街づくり② 活動が発展するコツは?
投稿日:2009年12月28日 カテゴリ:教育insight
(2)細胞分裂のように発展するPTA活動―地域・子どもとともに
■小学校も中学校も「絆」を大切にしながら
A小学校のスローガンは、「心豊かでたくましい子」。「親がかかわりましょう」とか「全面的に学校を信頼しましょう」など、いずれもどこの学校にでもある目標である。
しかし、単独のPTAといえども、ここはPTA自身の活動力を高めるための研修を丁寧に重視している。だから、PTA活動のツボのようなものが代々引き継がれ、発展しているようだ。
その一つが、子どもの声を大切にしていること。たとえば、ベルマーク集めなどというありふれた取り組みにしても、子どもたちの発案から「地域を巻き込む」。スーパーに回収箱を設置したり、ポスターを作ったり、自治会報に掲載してもらったり、あるいは市民運動会でも回収されて他校にも広がっていく。こうして例年の2倍以上回収できたという。きっかけは「スーパーに置かせてもらったら?」という子どものつぶやきだという。
B中学校のスローガンのひとつは、「親と子が心を開く」。スクールカウンセラーや校長、養護教諭らから「心と体」「心の交流」「食育」などについての講義を聴き、力をつけていく。
具体的な取り組み例も面白い。
実際に親子の心の交流をサポートしていくのだ。どんな言葉に「心」を感じたのか、事例を集める。すると、母の「あんたがいてくれてよかったー」という一言が子どもを「幸せ」な心にしていることが分かったり、「オカン!風邪ひくよー」という子の一言に母が涙ぐんだりしている。
「言葉の力って不思議!」と感動する子どもたち。「子どもに支えてもらってる」と述懐するお母さん。PTA活動をきっかけに、それぞれの家庭でそれぞれにふさわしい色合いで親子の心の絆がつながり始めていくのだ。
■245の子ども会
子ども会育成協議会には245もの「子ども会」が結集している。“異年齢の子どもたちが遊びを通して育ちあう”ことを目的に、もう42年目の活動に入るという。やはり、ここでも「学習⇒例示⇒交流」が会の活動発展の方程式になっているようだ。このパターンによって、伝統が引き継がれ、新しく計画が練り上げられ、次へとステップアップしていく段取りである。
しかし、環境と子どもの変化は激しく、子どもたちは声をかけられるまでじーっとしているようだ。
今、協議会の課題は、①単位子ども会をいかに活性化させるのか②地域とのかかわりの緊密化の2つという。
「ラジオ体操」活動について具体的に紹介すると、次のような子ども参加、地域参加の工夫と知恵を出し合っている。
- 案内状は子どもたちが作成
- 町内会に回覧版で通知
- 一緒に付き添って活動
- 広場のゴミ拾い
- 御礼の手紙活動
何でもない取り組みの中にも、いかに住みやすい街をつくるのか、「絆」を強めるのかといった視点が大切にされていることがわかる。
子どもの体力を鍛えようとか、生活規律を確立させようといった大人目線や訓練主義的発想がにおわないのも、しなやかでいい。
今年2009年は「子ども代表者会の活動をいかに生かすのか」など、やはり子どもに主眼を置いて、「子どもの声を大切に」「子どもと大人が一緒に」などをテーマとした、自分たちで出来るエコ活動やペットボトルの回収などに取り組んでいる。これも「無理なく―」がポイント。だから「わが子の1個」が活動スローガンだ。
この活動にも、やはり回覧版を回すなど自治会役員の協力がある。また、地域のお店も協力する。全体として「子どもの考え、発想力」が大切にされて、「市民運動会」(12月)でも実施しようということにつながっていくのだ。ここが他市の大人から子どもへ呼びかける方式と反対で優れているポイントといえる。
■170もの「親子サロン」が網の目に
こちらは市役所「子育て支援課」による子育て応援プランの一環。
「子育てをみんなで支え合うまち―親子の絆と笑顔のために―」が理念となっている。
具体的には、「家庭の共育力の向上」「地域の協育力の向上―地域の子どもは地域で育てる。子育て家庭を地域で支える」が行動目標だ。
親子サロンは“地域の居場所で時間を共有する”こと。したがって、育児中の親子、マタニティママ、地域のおじいちゃん、おばあちゃんが集う。名前を覚えてもらうといった初歩的目標の実現から実践している。
市の支援は借り上げ料の支払い、ボランティアさんへのアドバイス、月2回のPR(チラシの回覧を回してもらう)など簡単なものだけ。しかし、細く長く続けることやおやつづくりの仲間中心で動いたり、先輩ママさんがサポートしたりと個性と特性、要求をさまざまに生かして活動している。名称も「花いちもんめ」、「プチトマト」、「ニコ2♡」などとかわいい。
「親子さんの笑顔から元気をもらっている」とボランティアさんは元気そのものである。
貴重な教訓を教えてくれる。